アスベストを含む可能性のある住宅の解体や改修を行う際には、法令に基づいた適切な調査や対策が必要です。本記事では、アスベストの基礎知識をはじめ、使用された建物の解体費用や工事の流れについて詳しく解説します。解体を検討している方は、事前準備や注意点を確認するための参考にしてください。
アスベストの基礎知識
アスベストとは、天然鉱物が繊維状に変化したものの総称で、別名「石綿(いしわた)」とも呼ばれています。代表的な種類には、白石綿と呼ばれるクリソタイル、茶石綿のアモサイト、青石綿のクロシドライトなどがあります。
かつてアスベストは、曲げや引張りに対する強さ、優れた耐熱性・断熱性、耐摩擦性、電気絶縁性など多くの特性を持つことから「奇跡の鉱物」と呼ばれていました。
そのため、戦後の高度経済成長期には、住宅やビルの建材をはじめ、自動車部品や家庭用品など幅広い分野で使用されていました。
住宅では、屋根材や外壁材、内装材、吹き付け材、断熱材などに利用されていましたが、後に人体への有害性が明らかになり、現在では製造や使用が厳しく制限されています。
アスベストの危険性
アスベストは、かつて建材などに広く使用されていましたが、1970年代以降、人体への深刻な健康被害を引き起こすことが明らかになりました。アスベストの繊維は非常に細かく、空気中に飛散しても目で確認することが難しいため、知らないうちに吸い込んでしまう危険があります。
吸入されたアスベストは体内で分解・排出されにくく、肺に長期間残留することで病気を引き起こす原因になります。
とくに注意すべき点は、症状がすぐに現れないことです。発症までには15~40年ほどの長い潜伏期間があるため「サイレントキラー(静かな時限爆弾)」とも呼ばれています。
アスベストとの関連が確認されている代表的な疾患には、肺や胸膜に発生する病気があります。
そのため、アスベストを含む可能性がある建物を解体する際には、作業員だけでなく周辺住民への影響にも配慮した適切な対策が必要です。
アスベスト含有建材の解体で注意すべき点
アスベストを含む建材を使用した住宅の解体は、今後も増加すると予想されています。とくに古い住宅の解体では、法律や基準に沿った慎重な作業が必須です。ずさんな解体工事を行うと、大量のアスベストが周囲へ飛散し、健康被害を拡大させる可能性があります。
そのため、国土交通省では建材の発塵性(粉じんの発生しやすさ)に応じて、作業レベルを1~3の3段階に分類しています。
レベル1(著しく発塵性が高い建材)
レベル1は、アスベストを含む吹き付け材などが対象で、撤去時に大量の粉じんが発生するため最も危険度が高い作業です。防火材や外壁の仕上げ塗材などに使用されていたケースがあり、防塵マスクや防護服などの保護具の着用、作業場所の隔離、前室の設置、各種届出など厳重な飛散防止対策が必要です。
レベル2(発塵性が高い建材)
レベル2は、アスベストを含む断熱材、保温材、耐火被覆材などが該当します。レベル1と同様に発塵リスクが高いため、作業場所の隔離や前室の設置など、厳しいばく露防止対策が求められます。レベル3(発塵性が比較的低い建材)
レベル3は、アスベスト含有スレートやビニル床タイルなどの成形板が対象です。建材内部にアスベストが固定されているため通常時の飛散リスクは低いものの、切断や破砕を行うと粉じんが発生します。そのため、水や薬剤による湿潤化を行い、手作業で慎重に撤去することが基本です。
アスベストを含む建物を解体する際にかかる費用
アスベストを含む建物を解体する場合、通常の解体工事よりも追加の除去費用が発生します。ただし、費用はアスベストの使用箇所や含有建材の種類、作業レベル、建物の規模などによって大きく変動するため、事前調査による正確な確認が重要です。
屋根材にアスベストが含まれる場合の費用
アスベストを含有した屋根材(石綿スレートなど)の撤去費用は、30坪程度の2階建て住宅の場合で約20万円が目安です。屋根材に含まれるアスベストは、セメントで固められているケースが多く、飛散リスクは比較的低いため、作業レベル3に分類されることが一般的です。
撤去時には、散水や薬剤によって屋根材を湿らせ、アスベストが空気中に飛散しないよう配慮しながら慎重に作業を行います。
外壁にアスベストが含まれる場合の費用
アスベストを含む外壁材の撤去費用は、30坪程度の2階建て住宅で30万~40万円ほどが目安です。外壁は屋根よりも施工面積が広いため、撤去費用も高くなる傾向があります。外壁材も屋根材と同様に比較的飛散性が低い建材が多く、作業レベル3に該当するケースが一般的です。撤去する際は、水や薬剤で湿潤化しながら取り外すことで、アスベストの飛散を防ぎます。
内壁や配管に使用されている場合の費用
内壁や配管などにアスベスト含有建材が使用されている場合、除去費用は1㎡あたり約1万~6万円程度が目安です。建物全体で除去する場合には、数百万円規模になることもあります。これらの建材は、使用状況によっては飛散性が高く、作業レベル2に分類されることがあります。作業員は防塵マスクや防護服を着用し、厳重な安全対策を行ったうえで撤去作業を進めなければいけません。
天井や柱、梁に吹き付けられている場合の費用
天井や柱、梁などにアスベスト含有の吹き付け材が使用されている場合、撤去費用は1㎡あたり約1万5,000~8万5,000円程度です。建物全体では数百万円に達するケースもあります。吹き付けアスベストは、含有濃度や飛散性が非常に高いため、最も危険度の高い作業レベル1に分類されます。作業場所の隔離や専門的な防護対策が必要になるため、費用も高額になりやすいです。
アスベストを含む建物を解体する際の流れ
アスベストを含む建物を解体する場合、通常の解体工事とは異なり、事前調査や各種届出、飛散防止対策など、法令に基づいた慎重な対応が必要です。とくに平成26年6月1日以降は、発注者の責任が強化されており、工事を依頼する側も適切な確認や手続きを行うことが求められています。ここでは、解体工事の基本的な流れを7ステップに分けて解説します。
建物の事前調査を行う
解体工事を始める前に、専門業者による建物の事前調査を実施します。調査では、アスベストが使用されているか、どの建材に含まれているかを確認し、その結果を施主へ書面で報告します。調査結果は適切に保管するとともに、工事現場にも掲示しなければいけません。
また、工期短縮や過度な値引きによって安全対策を妨げることは禁止されているため、発注者も適正な工事計画に協力することが大切です。
必要な届出を提出する
アスベスト除去工事では、作業レベルに応じて行政への届出が必要になります。とくに作業レベル1・2に該当する工事では、工事計画届出書や特定粉じん排出等作業実施届出書、建築物解体等作業届などの提出が求められます。
一方、作業レベル3の場合は届出が不要ですが、事前調査や作業計画の作成は必要です。工事前に必要な手続きを確認し、漏れなく対応することが重要です。
近隣住民へ工事内容を周知する
解体工事を行う際は、作業内容やアスベスト対策について、現場の見やすい場所へ掲示する必要があります。掲示内容には、アスベスト使用の有無、飛散防止措置、作業期間、施工業者名、作業主任者名などが含まれます。事前に周辺住民へ工事内容を知らせることは、不安やトラブルの防止に欠かせません。
足場や養生設備を設置する
解体作業前には、アスベストや粉じんの飛散を防ぐため、足場や養生シートを設置します。作業レベル1の場合は、作業場所の隔離や前室、集じん・排気装置の設置など、より厳重な管理が必要です。飛散防止対策を行う
アスベスト除去作業では、水や専用の飛散防止剤を使用して建材を湿らせ、粉じんの発生を抑えながら作業を進めます。人体への影響が少ない薬剤や、水硬性セメントによる固化処理などが用いられる場合もあります。アスベストを除去し適切に梱包する
取り除いたアスベスト含有建材は、破損しないよう二重のプラスチック袋や密閉容器に入れて保管します。その際、アスベスト廃棄物であることを明確に表示し、適切な管理を行います。清掃と廃棄処理を行う
除去作業が完了した後は、使用した道具や作業場所に残ったアスベストを取り除き、周辺を清掃します。その後、アスベスト廃棄物は許可を受けた産業廃棄物処理業者へ引き渡し、適切に処分される流れです。処理が適正に行われたことを確認するための書類であるマニフェストは、5年間の保存義務があります。アスベストを含む建物の解体では、安全対策だけでなく、調査から廃棄まで一連の手続きを正しく行うことが重要です。