「管理する時間がない」「遠方に住んでいて手入れが難しい」といった理由から、空き家を放置してしまうケースは少なくありません。しかし、空き家をそのままにすると建物の老朽化だけでなく、税金や法律上の問題などさまざまなリスクが生じる可能性があります。本記事では、空き家を放置するリスクや活用・処分方法について解説します。
空き家を放置することで発生するリスク
親から相続した実家を「いつか整理しよう」と考えたまま、空き家として放置しているケースは少なくありません。しかし、空き家は所有しているだけでも管理責任が伴い、放置期間が長くなるほど経済的・法律的な負担が大きくなる可能性があります。
近年は空き家対策に関する法整備も進み、管理が不十分な住宅には行政指導や税制上の不利益が生じやすいです。ここでは、空き家を放置することで起こり得る主なリスクを5つ紹介します。
倒壊や事故による損害賠償責任
空き家であっても、所有者には建物を適切に管理する義務があります。老朽化した建物や門扉、外壁などが倒壊・落下して第三者に被害を与えた場合、所有者が損害賠償責任を負う可能性があるのです。さらに、危険な状態が改善されない場合は行政から助言や勧告、命令が行われ、最終的には行政代執行によって建物が解体され、その費用を所有者が負担するケースもあります。
万が一に備え、火災保険や賠償責任保険への加入も検討しておくと安心です。
維持費や管理費の負担が続く
空き家は利用していなくても、固定資産税や建物の維持管理費が発生します。マンションや別荘の場合、管理費や修繕積立金の支払い義務があるのは所有者です。滞納すると管理組合から督促や訴訟を受ける可能性があり、財産の差し押さえにつながることもあります。相続する際は、管理費などの未払いがないか事前に確認しておくことも重要です。
近隣住民とのトラブルにつながる
管理されていない空き家では、雑草や樹木が伸び放題になったり、害獣や害虫が発生したりすることがあります。また、不法侵入や不法投棄など犯罪の温床となるリスクも否定できません。こうした状況は近隣住民に迷惑をかけるだけでなく、苦情やトラブルの原因にもなります。遠方に住んでいて管理が難しい場合は、空き家管理サービスの利用も有効な選択肢です。
売却の機会を逃してしまう
空き家は時間が経つほど建物の老朽化が進み、不動産としての価値が低下する可能性があります。とくに人口減少が進む地域では買い手が見つかりにくくなり「もっと早く売却していれば」と後悔するケースも少なくありません。
将来的に売却を考えている場合は、建物の状態が良いうちに専門家へ相談し、早めに行動することが重要です。
税制優遇を受けられなくなる可能性
相続した空き家には「相続空き家の3,000万円特別控除」や「取得費加算の特例」など、一定の条件を満たせば利用できる税制優遇制度があります。ただし、これらは適用期限が定められているため、空き家を長期間放置してしまうと利用できません。
また、管理不全空き家や特定空家等に指定されると、住宅用地の固定資産税軽減措置が解除され、税負担が大幅に増えることもあります。
空き家を所有している場合は、制度の期限も踏まえながら早めに対応を検討することが大切です。
空き家の活用・処分方法
相続した空き家は、そのまま所有し続けるだけでなく、売却や賃貸などさまざまな活用方法があります。ただし、どの方法にもメリットと注意点があるため、建物の状態や立地、市場価値、将来の活用予定などを踏まえて判断することが大切です。
また、税制優遇や補助金制度を活用できるケースもあるため、制度の適用条件も確認しながら進める必要があります。
ここでは、空き家の代表的な活用・処分方法と、それぞれの特徴について解説します。
更地にして売却する
老朽化が進み、修繕やリフォームに多額の費用がかかる建物は、解体して更地の状態で売却する方法が選ばれることがあります。建物を撤去することで土地の全体像が分かりやすくなり、住宅用地として活用するイメージを持ちやすくなるため、買い手が見つかりやすくなる可能性があります。
また、建物がなくなれば老朽化による倒壊や火災などのリスクも軽減され、火災保険の負担も不要です。
さらに、一定の条件を満たせば「相続空き家の3,000万円特別控除」を利用できる可能性があり、売却時の譲渡所得税を大きく軽減できるケースもあります。
昭和56年3月31日以前に建築された住宅など、適用には一定の要件があるため、最新の制度を確認しておきましょう。
更地売却の注意点
更地にする最大のデメリットは、解体費用や残置物の処分費用が発生することです。建物の構造や立地条件によって費用は異なりますが、木造住宅であっても数百万円程度かかる場合があります。また、家具や家財道具が残っている場合は、その処分費用も別途必要です。さらに、更地は不法投棄の対象になりやすく、管理を怠るとゴミの撤去費用や近隣からの苦情につながることがあります。
ロープやフェンスの設置、人感センサーライト、防犯看板などを活用し、適切な管理を続けることが大切です。
もう一つの注意点が固定資産税です。住宅が建っている土地には住宅用地特例が適用されていますが、更地になるとこの特例が外れ、固定資産税が大幅に増える可能性があります。
課税額は毎年1月1日時点の状況で決まるため、解体時期によって税負担が変わる点にも注意が必要です。
建物付きのまま売却する(現状引渡し)
建物の状態が比較的良好で、そのまま利用できる場合は、解体せずに現状のまま売却する方法もあります。これを「現状引渡し」といい、近年ではリフォーム前提で住宅を購入する人も増えているため、有力な選択肢となっています。
現状引渡しの最大のメリットは、解体費用が不要になることです。建物をそのまま引き渡すため、売却前に大きな工事費用を負担する必要がありません。
また、住宅用地特例が継続されるため、更地にした場合のような固定資産税の増加を心配せずに済みます。
現状引渡しの注意点
一方で、売却後に建物の不具合が見つかった場合は「契約不適合責任」を問われる可能性があります。例えば、シロアリ被害や雨漏り、設備の故障、建物構造の腐食などが判明すると、修繕費用や損害賠償を請求されるケースもあります。
こうしたリスクを軽減するためには、事前にインスペクション(建物状況調査)を実施し、建物の状態を把握しておくことが有効です。
また、設計図面や修繕履歴などの資料を準備しておくことで、購入希望者にも安心感を与えられます。
さらに、古い間取りや設備、耐震性能などによっては購入希望者が限定される場合もあるため、建物の状態や地域の需要を踏まえて売却方法を検討することが重要です。
空き家を賃貸して活用する
売却以外の選択肢として、空き家を賃貸住宅として活用する方法もあります。建物をリフォームして貸し出せば、家賃収入を得ながら資産を維持できるかもしれません。また、建物を解体してアパートや賃貸住宅を建築し、土地を有効活用する方法もあります。
近年は、自治体による空き家改修補助やリフォーム補助などの制度が充実してきており、一定の条件を満たせば改修費用の一部を補助してもらえるケースもあります。
そのため、活用方法を検討する際は、自治体の支援制度も確認するとよいでしょう。
ただし、賃貸経営を始める前には、周辺地域の賃貸需要や家賃相場、空室率などを十分に調査することが欠かせません。
リフォーム費用をかけても家賃収入で回収できるかどうか、長期的な収支を試算したうえで判断することが重要です。
売却と賃貸は税制面も比較して判断する
空き家を活用する際は、収益性だけでなく税制面も比較する必要があります。とくに「相続空き家の3,000万円特別控除」は、一定の条件を満たした売却で利用できる制度ですが、相続後に賃貸へ出した場合は対象外となる可能性があります。
そのため、将来的に売却を予定している場合は、賃貸による家賃収入と売却時に受けられる税制優遇のどちらが有利になるかを比較検討することが大切です。
不動産会社や税理士などの専門家へ相談しながら、自分の状況に合った方法を選択することで、資産価値を維持しながら有効活用しやすくなります。
空き家を速やかに処分する方法
相続した空き家を所有していると、固定資産税や管理費用の負担、定期的な清掃や修繕など、さまざまな手間が発生します。そのため「できるだけ早く手放したい」と考える方も少なくありません。しかし、立地条件や建物の状態によっては、売却活動を始めてもなかなか買い手が見つからないケースもあります。
空き家をスムーズに処分するためには、状況に応じた方法を選択することが重要です。ここでは、代表的な3つの処分方法について解説します。
不動産仲介会社に依頼して売却する
空き家を売却する一般的な方法は、不動産仲介会社へ依頼して買い手を探してもらう方法です。市場に出して購入希望者を探すため、条件が良い物件であれば希望に近い価格で売却できる可能性があります。一方で、築年数が古い、需要が少ない地域にある、価格が低いといった不動産は、仲介会社が積極的に取り扱いにくい場合があります。
こうした背景から、宅地建物取引業法が改正され、低価格帯の不動産については仲介手数料の上限が見直されました。
これにより、不動産会社側も販売活動に必要な費用を確保しやすくなり、売却活動に取り組みやすい環境が整っています。
不動産買取専門業者へ売却する
「できるだけ早く空き家を手放したい」という場合には、不動産買取専門業者へ売却する方法があります。仲介による売却では購入希望者を探す必要がありますが、買取の場合は業者が直接買い取るため、売却までの期間を短縮できます。
買取業者は空き家や築古物件などを取り扱っていることも多く、個人の買主を探すよりも早く売却できる点がメリットです。
また、複数の買取業者へ査定を依頼し、条件を比較することで、より納得できる価格で売却できる可能性があります。さらに、複数の買取業者を競わせる「入札方式」を利用する方法もあります。
複数社から購入条件を提示してもらうことで価格を比較でき、希望条件に合わなければ売却を見送ることも可能です。条件が整えば、数か月程度で売却を完了できるケースもあります。
不動産引き取りサービスを利用する
売却活動を行っても買い手が見つからない、賃貸として活用することも難しい空き家の場合は、不動産引き取りサービスを利用する方法もあります。不動産引き取りサービスとは、専門業者に費用を支払って不要な不動産を引き取ってもらう仕組みです。
売却とは異なり、所有者が処分費用を負担する形になりますが、条件が合えば短期間で手放せるため、管理負担から早く解放されたい方には有効な選択肢です。
ただし、空き家の状態や立地によって引き取り条件や費用は大きく異なります。
建物の解体が必要になる場合や、更地にしてから引き取りとなるケースもあるため、事前に見積もりを取り、費用や条件を確認することが大切です。
まとめ
空き家は、放置しているだけでも管理負担や税金、近隣トラブルなどさまざまなリスクが発生する可能性があります。一方で、売却や賃貸、買取、引き取りサービスなど、状況に合わせた適切な活用・処分方法を選ぶことで、将来的な負担を軽減できます。大切な資産を無駄にしないためにも、空き家の状態や目的に合った方法を早めに検討し、必要に応じて専門家へ相談することが重要です。参照元:https://note.com/ms_rinkeiji/n/n10917b237970